我孫子市にある脳神経外科、内科、リハビリテーション科のほしの脳神経クリニック

             

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物忘れ

物忘れについて

I.コウノメソッド

コウノメソッドとは? 名古屋フォレストクリニック、院長、河野和彦先生が始めた、認知症の診断および治療方法のことです。

具体的には、
認知症の類型診断を正しく行います。類型診断がつかなくても、症状に応じて臨機応変に対応します。
類型診断に対して、その陽性症状、陰性症状に対する治療薬を、さじ加減して処方します。

II.予防

認知症の要因:環境因子、加齢、遺伝
自分で改善できるのは環境因子のみ、癌、生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)の予防と重なる欧米で多い病気:アルツハイマー病、大腸癌、前立腺癌、乳癌、乳製品、肉食などが関係していると考えられます。

III.早期診断

認知症の患者は取り繕いが上手で、医師が病気を見落とすことがあります。
家族がおかしいと感じたら、認知症。
物忘れ以外に以下の症状があれば、認知症。

  • 病識の欠如
  • 怒りっぽい
  • 被害妄想
  • 落ち着かない
  • 買い物ミス
  • 性格変化
  • 幻覚

画像診断、記憶力検査だけでは見落とすこともあります。
長谷川式スケールは言語性知能を見るテスト
認知症なのに得点が高い場合、ピック病、教育程度が高い人
生活能力の低下をよく反映する、時計描画テスト
画像検査は、認知症の種類を鑑別するためのものです。
早期に診断・治療することにより、認知症の発症や進行を予防することができます。

IV.診断

A.アルツハイマー型認知症(AD、認知症の55%)

潜伏期間が10-20年、AD+脳血管性 7.5%
頭頂葉、側頭葉後方、後部帯状回の萎縮
神経細胞の残りの数がある程度の限界に達すると、新しい記憶ができなくなります。
ADの4割の画像所見は、非典型的で海馬の委縮がほとんどありません。
4割は、無症候性脳梗塞などの血管因子を持ちます。
短期記憶障害が高度、道に迷う、女性が多い、健康で医者にかかったことがない、元気で明るい、歩行正常、出まかせ応答、緩徐に進行、神経症状は目立たない、物忘れの自覚がないか、あっても深刻味に欠ける、取り繕う。
その人らしさがなく児戯的になる、嗅覚障害(70-80%)
アルツハイマーらしさ:時計描画テストと長谷川式認知症テストの後半が苦手
発病後平均8年で亡くなります。

1.初期症状(健忘期)
進行性記憶障害
何度も同じことを言う、直前の事を忘れる、物盗られ妄想、不安・うつ状態になる、趣味や日課への無関心、取り繕いのため作話をします。

2.中期症状(混乱期)
行動・心理症状が強く出ます
場所、時間、季節がわからない、徘徊や妄想が多くなります、実行機能障害、失語、日常生活に介助が必要となります、不潔行為・失禁。

3.後期症状(終末期)
寝たきりに移行します
家族の顔がわからない、表情が乏しくなります、会話ができない、失禁、寝たきりになり手足が拘縮します、食事が飲みこめなくなります。

B.レビー小体型認知症(DLB、認知症の15%)

DLB+脳血管性 5% 後頭葉、側頭葉後方の萎縮
パーキンソン症状で始まる患者、うつ状態で始まる患者、幻視で始まる患者の3タイプがあります。症状が全て出そろうのに5年以上かかります。

薬剤過敏のことが多い(抗精神病薬、風邪薬で転倒する、アリセプトで興奮、転倒)。
妄想、明瞭な幻視の出ることが多く、「泥棒が入った」と警察に電話してしまいます。これに本人も気づくことがある、長い時間続くことがあります。

パーキンソン症状
表情は硬く無表情、相手を見ません。
ゆっくりしたすり足歩行、足を開いていながら小刻み歩行、方向転換が不安定、腕の振りはなく指は曲げていることが多い、上半身はやや前傾し、左右に傾いていることもある。座っている時は体が後ろに反っています。

睡眠行動障害、うつ状態など
夢の世界にいて昼寝は1時間以上、食後すぐ寝てしまいます。食後長く座っていると意識を5分程度失うことがあります。
意識レベルは変動。知能検査の成績もいつも異なります。レム睡眠行動障害(夢遊病)、幻視以外の精神症状(誤認、昔と今を混同します)。

随伴症候
白内障・緑内障、自律神経症状(便秘、発汗、立ちくらみ、失神、転倒など)、嗅覚障害(70-80%)。
一部の患者を除き進行が速く、5年ほどで歩行障害、嚥下障害、寝たきりの流れをたどりやすいです。

C.脳血管性認知症(認知症の10%)

感情失禁、尿失禁、うつ状態、アパシー、夜間せん妄・不穏、不眠
男性が多い、内科に通っている、動作が鈍い、表情が暗い、認知症テストではわかりませんと言います。
半数は脳卒中3力月以内に発症。
初期症状はADと一緒だが、物忘れの自覚あり。
性格・判断力はあまり変わらない。
再発を抑えると進行を抑えられます。

ビンスワンガー型
長年の高血圧症や糖尿病により、末梢の脳血管がびまん性に虚血を起こします。すり足歩行、ワイドベース(両足を左右に大きく開いてバランスをとる)。ADと同じように進行します。
脳血管性認知症にADが加わると、非常に進行が早く治しにくいです。

D.前頭側頭型変性症(5-10%)

1.ピック病(FTD、前頭側頭型認知症)
前頭葉・側頭葉萎縮。50-60代で発症することが多い。

  1. 状況に合わない行動:身勝手な行為、状況に不適切な悪ふざけ
  2. 意欲減退:原因不明のひきこもり、何もしない
  3. 無関心:服装、衛生状態に無関心で不潔になります。
  4. 逸脱行為:軽犯罪を繰り返す、反省しません。
  5. 時刻表的行動:散歩など決まった時間に行う、止めると怒ります。
  6. 食べ物へのこだわり:毎日同じもの(特に甘いもの)しか食べない、際限なく食べる、異食、拒食、過食、盗食
  7. 常同言語、反響言語:同じ言葉を際限なく繰り返す、他人の言葉をオウム返し
  8. 嗜好の変化:好きな食べ物が変わる、飲酒、喫煙が大量に
  9. 発語障害・意味障害:無口になる、はさみ・メガネなどを見せても言葉の意味や使い方が分からなくなります。
  10. 記憶・見当識は保持:最近の出来事は覚えています。
    アリセプトで暴力行為が出ることがあります。

2.意味性認知症(SD)
臨床診断名なので、病理診断ではADとなることが多いです。言葉や道具(箸、スプーンなど)の使い方や意味が分からなくなる、ADより進行が速い、要介護度が高い、アリセプトが効かない、ピック化しやすいです。

3.進行性非流暢性失語(PNFA)
発語は拙劣で短く緩徐、発語開始が困難、発語量減少、失文法、構音障害、復唱困難、音韻性錯語、努力性発語、錯読など。ピック化しにくいです。
臨床診断名で、病理的にはAD、FTDなど様々。

E.正常圧水頭症(NPH)

歩行障害、尿失禁、認知症を3徴候とします。

歩行障害
やや足の間隔が広く、歩行していて急に足が出なくなることがあります。
小刻み歩行(よちよち歩き)、すり足歩行(膝があまり上がらない)、パーキンソン病と異なり、号令や目印での歩行改善に乏しいです。
シャント手術により改善しやすいです。

尿失禁
切迫性尿失禁(トイレに行こうと思うが我慢できない)、波があります。

認知症
AD、DLBと合併することがほとんど。この病気単独では重度認知症にはなりません。

診断
入院のうえ、髄液を30-50ml抜き歩行障害が改善するかどうか見ます。一度髄液を抜いただけで、その後歩行障害、尿失禁が改善する症例もあります。

F.クロイツフェルト・ヤコブ病

平均発症年齢60代半ば。
視点が定まらない、大きな音に体がびくんと反応させる、
体が硬くなり手は開いたまま宙に浮いている、口が開いたままでよだれが垂れる。脳波で確定診断がつけられる(三相波)。
発症2-3力月で急にしゃべれなくなり、歩行もできなくなります。

G.全身疾患による認知症

1.肝硬変、肺気腫などによる低酸素血症

2.甲状腺機能低下症
ADと合併することが多い。血液検査でわかります。
思考力、動作が鈍くなります。寒がり、脱毛(特に頭髪)、便秘、寒がり、徐脈、うつ状態、足のむくみ(押してもへこまない)、腱反射減弱など。

3.アルコール依存症
栄養失調、肝臓病、腎臓病、ビタミンB1欠乏症を併発いていることが多い。怒りっぽい、妻への暴力。
進行すると、耐性が落ちて少量の飲酒でひどく酔うようになります。
コントロール障害:少しでもアルコールを口にすると、適量で終わることが出来ず飲み過ぎて問題を起こしてしまいます。
早期離脱症状:手や全身のふるえ、発汗、不眠、嘔気、嘔吐、血圧上昇、不整脈、幻聴、痙攣、集中力低下。
後期離脱症状:幻視、見当識障害、興奮、発熱、発汗。

4.コルサコフ症候群
ビタミンB1欠乏症による、視床背内側核または両側乳頭体障害によります。
原因:アルコール依存症、外傷、脳卒中。
作話でつじつまを合わせる、見当識障害、過去の記憶も忘れていく,新しいことを覚えられません。理解力や計算は保たれます。

V.認知症の症状とその治療

A.中核症状

記憶障害
出来事を忘れます(朝食を食べたかどうかなど)、最近の事をすぐ忘れます、進行すると体験や経験を忘れます(家族の顔がわからないなど)。

失見当
今がいつで自分がどこにいるかわからない、迷子になりやすいです。

判断力低下
とっさのことに対応できません。

実行機能障害
料理など物事の手順がわからなくなります。

失認
箸の使い方がわからないなど。

失行
服を着ることができない、支持された動作ができなくなります。

失語
言葉が出にくい、言葉が理解できません。
中核症状は全ての認知症の方にでます。徐々に進行していき、最後には寝たきりになります。

中核症状の進行を抑えるためにおすすめの薬…レミニール、パッチ製剤、メタンフェタミン、アリセプト、サアミオン

B.周辺症状

1.陽性症状(90%)

  • 行動症状
    • 徘徊
      一見無目的にあちこち歩き回り、自宅に帰れなくなる。夕方や夜多いです。
      年間1万人が徘徊で亡くなっています。
    • 暴力、暴言
      言葉で説明する事ができないため、行動で示します。
    • 食行動異常
      食べ物以外を食べる(異食)、過食、拒食、甘いものだけ食べる、丸呑みしてむせる、嚥下障害。
    • 失禁、不潔行為
      トイレの場所がわからない、尿意が伝えられない、尿意がわからないためです。汚れた下着を仕舞い込む、便をところ構わず擦り付けます(弄便)。
    • 睡眠障害
      神経伝達物質のアンバランスにより昼夜逆転となります。このため妄想、幻覚、せん妄が出やすくなります。
    • 介護拒否
      着替え、入浴などを拒否する。多くは自分自身の拒否。
      無為、無反応:自分の世界に閉じこもります。
  • 心理症状
    • 幻覚
      幻聴、幻視。DLBでは虫、小鳥、小人が多いです。頭ごなしに否定しません。
    • 不安、焦燥
      認知症の方は自分がおかしくなったことを感じています。そのためイライラします。
    • 抑うつ
      表情が乏しくふさぎ込みます。
    • 妄想
      物盗られ妄想、嫉妬妄想(配偶者が浮気をしている)、被害妄想(皆が悪口を言っている)。

抑制系薬剤を使用する…第1選択 メタンフェタミン、グラマリール
第2選択 セレネース、抗精神病剤、ルーラン、デパス、リーゼ
第3選択 ウインタミン、テトラミド、テグレトール 睡眠導入薬(ベンザリン、ロゼレム)、
抑肝散(妄想、幻覚、頭痛、神経質に対して)

抑制系薬剤が体に蓄積してくると、元気がなくなる、食事などに時間がかかる、ウトウトする、体が傾く、などの過鎮静の状態になることがあります。このようなときは少しずつではなく一斉にやめます。

AD:被害妄想…セレネース、易怒…グラマリール(チアプリド)、暴力…抗精神病剤、セルシン、テグレトール、凶暴…テトラミド、不安…デパス、リーゼ
DLB:幻視…抑肝散、セレネース、アリセプト1mg
ピック病:暴力…コントミン、デパケン、大声…ルーラン、凶暴…ジプレキサ、こだわり…デプロメール
非常に暴力的な認知症…抗うつ薬が功を奏することがあります。
脳梗塞が原因の妄想…サアミオンでかえって悪化することが多いです。

C.前頭側頭型変性症の治療

ピック病
第1選択:コントミン 第2選択:パッチ製剤、レミニール、

SD
第1選択:パッチ製剤、レミニール、第2選択:パーキンソン症候群治療剤、メタンフェタミン、ニコリン、リーゼ

PNFA
第1選択:メタンフェタミン

D.アリセプトの問題点

興奮性がある
DLBでは強いパーキンソニズムを誘発することがあります。
有効期間に限界
末期にてんかんを誘発(AD全体で1%、アリセプト使用で2%)
有効率63%アリセプトは平均9力月認知症進行を遅らせます。
アリセプトによる副作用(3-5mgを使用の場合)
内服初日から2週間(前期興奮 15%):下痢、怒りっぽい、胃痛、食欲低下
内服から2-3力月(後期興奮 25%):頻尿(対策薬:べシケア)、頑固(対策薬:グラマリール)、神経質(対策薬:リーゼ、デパス)、歩行障害(最初の1歩が出ない、これが出たらレビーの可能性大、対策薬:パーキンソン病治療薬)。3日間休んだ後アリセプトを半量にします。